一発ネタ・Guillotine

判決

主文

被告人・ミズホを有害文書単純所持罪で有罪とし、獄門5年に処す。

判決理由

被告人は国策の根幹たる全国道路網整備計画を中傷する目的で共犯者・某が作成した怪文書・道路創造学会天下りリストを被告人所有のパーソナルコンピューター(証拠物件第xxxxx号の3)ハードディスク内に保管し・・・

ミズホの回想

明日、いよいよ収監される。
いや、収監と言うより処刑といった方が適切だろう。
こんな筈ではなかった。
私たちプロ市民党はまんまと奴らの罠に嵌ったのだ。
あの頃は学校裏サイトを利用した陰湿な虐めが流行し、自殺者が後を絶たなかった。
それで有害文書の作成や流通だけでなく単なる所持も違法化しようという機運が超党派で盛り上がった。
人権の第一人者を自負する私たちは率先して有害文書規制法の立法に関わった。
だが、実は学校裏サイトの流行自体が与党・道路創造学会党の意を受けた公安警察の工作だった。
そして法案が成立するなり、我々野党議員の多くが有害文書単純所持罪で逮捕される羽目になった。
立法すべきは文書の規制でなく義務教育における公民科目の充実だと言うことに気付いたときは後の祭りであった。
もう一つまずいことに有害文書規制法成立の3年前に獄門刑が創設されていた。
きっかけは貧困層の増加による凶悪犯罪多発に伴う死刑判決の激増と刑務所の過剰収容問題であった。
わが党は死刑廃止を主張していたが、ひとまず死刑執行数を減らすべきとの観点から超党派による終身刑創設に賛成していた。
だが、これもまた与党の罠だったのだ。
刑務所の収容能力が不足し過剰収容が起きているところに終身刑を創設すればますますパンクする。
駄菓子下肢、刑務所増設のため莫大な予算を注ぎ込むことは到底国民の理解を得られない。
「罪人のために使う金があるなら俺たちにおにぎりを」という衆愚の声に押されて、刑務所のスペースを圧縮するため獄門刑が創設されることになった。
10年ほど前から医療訴訟が多発し、ガン手術の取り漏らしによる再発や難しい心臓手術などが失敗すると、逆上した遺族が些細なミスを死因だと主張して医療機関を提訴することが日常茶飯事となっていた。
このため敗訴して破産する医療機関が続出し、医療崩壊の時代などといわれ、防衛医療なるものが流行していた。
その風潮に便乗した産業界から恐るべきアイテム「完全生命維持装置」なるものが提案され、国の補助を受けて実用化された。
この装置は、切断された首の切断面に接続し恒久的に生かしておくことが出来るものであった。
それ自体は、不治の病に苦しむ一部の患者にとって福音であった。
だが、ひとたび量産化され保険適用となったとたん、殆どのガン患者が首から下の全身を失ってこの装置の世話になるようになった。
萎縮しきっていた医療機関は「あらかじめ完全生命維持装置適用を承諾しないなら治療の責任を負わない」という念書を取るのが当たり前になっていた。
こうしてますます完全生命維持装置は量産され、その原価を下げていった。
いまや、囚人一人当たりの刑務所維持費より完全生命維持装置のランニングコストの方が一桁安いと言われている。
そこに目を付けた与党は、終身刑においては社会復帰を前提としないのだから仕事が足りないのに刑務作業を課すのも無駄だ、首だけ生かしておけば死刑ではないから構わないといって獄門刑を創設してしまった。
ひとたび導入された獄門刑は歯止めが効かなくなった。
有期刑であっても満期が75歳以上なら事実上社会復帰は出来ないから裁判所の判断で獄門刑に振り替えることができるようになるまで僅か2年。
そしてついには、10年以上の懲役刑に対し獄門刑なら刑期を半減して良いことになり、最初は受刑者に選択させる話だったのが、いつの間にか裁判所が選択するようになってしまった。
そしてついに愚かなデマゴーグたる私の身にもその災厄が降りかかってきたのだ。


執行手術室

刑務官:「ミズホ、いや囚人・東京108108号、貴様は運が良いぞ。今日の”ごくせん”は経験豊富な朝右衛門だそうだ。事故は絶対無いぞ。」

ミズホ:「・・・
(今どきなにを言っているのやらである。
完全生命維持装置、別名獄門台が普及してからというもの、手術の大半が全自動断頭手術機・Guillotineで行われるのだ。
ごくせん(断頭手術専門医)は、医師とは名ばかりの自動手術機オペレーターに過ぎない。
なんとか医師の報酬を減らして国民医療費を削減したい厚生労働省と、獄門刑導入をもくろむ法務省、首だけになった人々の受け皿になろうと目論んだ防衛省が手を組んで医師法を改正し、自動式首切断術(獄門手術)だけを扱える資格・ごくせんを創設し、短大レベルの専門学校で大量に養成しているのだ。
今どき大きな病気をしても生身の体にこだわれるのは、高騰した従来型の医療費を払える金持ちだけである。
Guillotineは全自動で首の血管を確保し脊髄断端を神経エミュレーターに引き込む。
苦痛を感じる暇もなく首から下の感覚はエミュレーターに切り替えられるため麻酔は局所のみだ。
いまや、虫歯の治療の方が難しいというのも当たり前だ。もともと事故などまず起きない。
だがやはり怖い。何とか逃れる方法はないのか。)

刑務官:「おとなしくこの台に乗れ。そうだ。手足を拘束する。いいか、暴れるなよ。素直に受刑すれば痛くないぞ。さあ、始めてくれ。」

朝右衛門:「始めます。Guillotine起動、STEP1・首の消毒、STEP2・切断面検出、よし本番だ。」

ミズホ:「い、いやあぁぁぁぁ・・・」


刑務所の首棚

あれから1年、私は必要最低限の電源と栄養液だけを与えられ、この首棚に晒され続けている。
首だけになった私には食事も排泄も無い。
収監のとき丸坊主にされた頭も、ここに放置されている間にぼさぼさの伸び放題となった。
規則では定期的に刈って清拭することになっているはずだが、手抜きされているようだ。
獄門刑受刑者に刑務作業はない。
唯一許された作業は、神経エミュレーターを刑務所のサーバーに繋ぎこのサイトで記事を書くことだ。
このサイトに貼り付けられた広告の収入だけが、出所時に私の全財産となる。
完全生命維持装置だけは法の定めによって永久無償貸与されるが電気代と栄養液は自腹になる。
首が乗っかったミニタワーPCのような箱だけが私の体というわけだ。
これだけでは働けず生計が立てられないから、生きるためには機械体を買わなくてはならない。
最低でも、一番安い車輪式電動移動台と片腕分のマジックハンドがなければ仕事には就けない。
車輪式電動移動台は80万円、マジックハンドはハサミ型でも200万円はする。
なのに、検閲されたサイトで面白いネタがかけるはずもなく、この1年の稼ぎは僅か58円であった。
このペースでは、出所しても機械体を買うどころか日々の電気代すら稼げないだろう。
病気で獄門手術を受けたのなら、臓器移植法の特例で体のパーツを売却して機械体を買うことも出来た。
だが、私の体は私が所持していた文書で精神的苦痛を受けたと称する与党議員に慰謝料として差し押さえられてしまった。
機械体が買えなかった者が生きられる場所は、防衛省機械化部隊か、いまどき人間を受付案内係に置く余裕がある超優良企業だけだ。
大企業が前科者を雇ってくれるはずもないから、事実上行き先は一つである。
さりとて、一つでも雇用先がある以上、生活保護も認められない。
だが、いやしくも元プロ市民党党首たる私が地雷踏み用の機械体を付けて米帝の命じる戦場に赴くなど許されることではない。
このままあと4年が経ち出所したら、電池切れによる死を選ぶしかないのだろうか。
ああ、せめてこの広告がもう少し面白げでクリックレートの高いものであってくれれば良いのに。


参考文献

こいつ反エロ闘士かと思ったらFC2ユーザーかよw



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