ファースト・セクレタリ

スケルトン秘書制度

 このお話は、ケンタウリよりだいぶ後の時代、社会情勢の変化によって北米連でも全身サイボーグが珍しくはなくなった頃のことです。
この頃になると、基幹民族・ワスプ人による支配層独占は絶対的でなくなり、歴代大統領にはニグロ人やパニック人、東亜人、南亜人の血を引く者も居ました。
だからといって北米連たるものの本質が変わるわけもなく、格差社会、銃社会は変わりようもありません。
非ワスプ人の大統領といっても所詮成功者、上流社会の人間です。
いわば少数の例外、「白くないワスプ人」に過ぎないのです。
かえって「俺たちにもチャンスがある」という幻想を抱かせるが故に、大統領を出せなかった人種の嫉妬心を煽る存在でした。
それがためこの時代はむしろ昔以上に人種間の軋轢は厳しくなっていたのでした。
 そんな時代といっても超大国の体制が暴動で崩壊なんかしたら世界の破滅に繋がります。
だから、北米連大統領の身辺に特定人種の優遇を窺わせるような要素はひとかけらもあってはなりません。
特に24時間態勢で大統領の執務をアシストする大統領公設秘書には厳しい中立性、透明性が求められたのです。
中立性という点では全身機械化サイボーグは非常に好都合でした。
人工皮膚なら、いかなる人種にも属さないことが可能だからです。
さらに透明なスケルトンボディであれば、何も隠せない透明性という点で大きな信頼が得られるのです。
このため、いつの頃からか知りませんが大統領秘書はみなスケルトンボディの全身サイボーグとすることになっていました。
大統領は多忙ですから秘書も相当な人数が必要です。
官邸には常時数名が3交代勤務で配置されています。
外遊の際は先乗り秘書チームが約半月前から訪問先に乗り込んで現地執務室の設営にあたります。
サイボーグのメンテナンス環境を持ち込めないような非友好国や荒廃した国を訪ねるときは専用機内の移動執務室を拠点とすることもあります。
とても大勢の秘書が必要なので毎年数名の新人が養成されます。
それでは、そんな新人秘書 Varis Willson 嬢の経歴を覗いてみましょう。


秘書Varis Willson の経歴1・候補生採用

 私はバリス・ウィルソン、米帝とも呼ばれるこの大国の中枢で国家指導者の執務をアシストする仕事に就こうとしています。
なにしろ世界を何度も滅ぼせる量の核兵器を発射する権限の主に仕えるのだからその人選は半端なものではありません。
現行制度では一度クリスタルハウスの大統領秘書になった者は生涯辞めることが出来ません。
だから、高々2期8年で交代する大統領以上に権力に近くしかもその身分が固定的なのです。
まず第一の条件として、3親等以内に外国籍の者が居てはなりません。
次に最高ランクの秘書であるから、名門大の秘書科を卒業していなければ論外です。
ここまではまだ常識の範囲でしょう。
そして何より、並外れた精神安定性が求められます。
当直秘書は大統領のスケジュール調整を任されるのです。
もしもその職務に少しでも私情を挟み、気に入らない人間を大統領に面会させないよう操作したら大きな影響があるでしょう。
そこで秘書候補生は非常に厳しい試練を受け、心の平穏を試されることになっているのです。
またそれは一度秘書になったら一生変えることが出来なくなる容姿への心の準備を整える訓練でもあります。
私はいまその試練に直面しています。
私たちは秘書候補生となったその日に頭を落ち武者刈りにされ、頭頂部の皮膚、筋膜、頭蓋骨を切り取られました。
切り取った跡には透明な硬質ガラスのカバーが被せられ、大脳が丸見えの姿にされたのです。
髪が丸剃りでなく落ち武者刈りという中途半端な形にされるのは惨めさを強調する効果があるからでしょうか。
この姿で訓練中は歴代大統領の影武者たちが引退後も執務を続けている影の執務室に配置され、連日無理難題を言いつけられます。
脳見せ化手術のついでに埋め込まれた脳波送信機の出力はずっと監督官に監視されています。
そして基準を超える感情の起伏が検出されたら、即失格になるでしょう。
もちろん、一筋でも涙なんか見せたらアウトですね。
全ての難題は苦笑いを以て受け止めなければならないのです。
影執務室は室内の配置が本物と同じなのだが、壁が全面鏡張りというところだけは違っています。
これは我々を完璧に脳見せ姿慣れさせるためらしいです。
私の今日の配置先はイチャモン戦争で核を使ったあげく祖国を存亡の危機の陥れて暗殺された世襲大統領ヤブーの影執務室です。
ヤブーの影武者は気短さをとても巧みに演じてくれて実に笑える男だから結構楽しめます。

脳見せ秘書候補生・バリスウィルソン


秘書Varis Willson の経歴2・ファースト・セクレタリ配属

 大統領公設秘書に配属されたバリス・ウィルソンです。
あ、そこの人!、パリス・ヒルトンではありませんので間違えないで下さいね。
1年間の影武者仕えをそつなくこなした私は、全身スケルトン化手術にも無事耐えて今日こうして本配属を迎えました。
肌の色と無関係になった私はもうワスプ人ではありません。
公正中立、透明無比、一切私情を交えず大統領にお仕えする忠実な秘書です。
というのは、建前です。
ここだけの話ですが、実はワスプ人以外が秘書候補生に採用されることなんて無いんですよ。
そう、スケルトン秘書の制度というのは大統領がナニ人になろうが、ワスプ人の実効支配を失わないためにあるのです。
私たちは買収なんかされませんよ。
世襲権力は民主国家の敵です。
あの南太平洋帝國のサイボーグ娘みたいな軍事独裁体制なんか目指す気はありません。
世襲をしない覚悟の証として、スケルトンボディに脳移植を済ませた日に私は残った元の体ごと生殖器官を火葬にしてきました。
もう私の細胞は脳と脳修復用に必要最低限採取されたES細胞しか残っていません。
だから体外受精やクローンでこっそり子孫を残す可能性はありません。
私腹を肥やしても受け継ぐ人がいないから不正なんかする気が起きないんですよ。
だったらどうしてファースト・セクレタリはワスプ人が独占するのかって?。
そりゃ、有色人種が核のスイッチなんか握ったら危険じゃないですか。
特に宗教で凝り固まったアリババ人なんか、時々鉄の雨を降らせて間引いてあげないと世界中がテロリストで溢れてしまうでしょ。
んっ?ワスプ人こそハゲタカ教に凝り固まっているって?。
あははは、それは片田舎の農家のおじさんとかの話ですよ。
本気で来世なんか信じていたら火葬は出来ませんわ。
とにかく私たちこそが正義なんです。
満漢人民共和国にだって宦官制度があるじゃないですか。
世界の伝統ある大帝国ならこうして社会の安定を図るのが当然ですわ。

For my dear minitmans, Varis Willson.

ファーストセクレタリ・バリスウィルソン


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