風邪の季節の妄想・コスモクリーナー娘

このお話は”オプションパーツ”世界とは無関係の妄想です。

スーパーエボラ

西暦2xxx年、進化したエボラウィルスはついに北アフリカを含むアフリカ全土を席捲した。
そして私の人生をも大きく狂わせることになっててしまった
新型エボラの感染力はすさまじく、送り込まれた各国医療支援隊に生還者は居ない。
非常事態条約によりアフリカ大陸との往来は全面禁止となった。
取り残されたアフリカ住民の多くは全身から血を吹き出して死に、数千人に1人という特異免疫保有者だけが生き残っているらしい。
衛星写真によれば、殆どの都市にも村にも人の活動する気配はなく、僅かな生存者も狩猟採集の原始生活に還り、時にはライオンの餌食となっているようだ。
野獣は強い。
ライオンはエボラ死者の肉を食らっても平気なのだろう。
ライオンが生きているくらいだから野鳥も平気で飛び回っている。
このまま放置すればいずれ渡り鳥が進化したウィルスを他の大陸にも運んできてしまう。
なんとしてもアフリカ大陸の滅菌をしなければ人類滅亡だ。

滅菌焼灼娘隊

アフリカ大陸滅菌のため国際滅菌焼灼隊が編成されることになった。
だがアフリカ大陸に生身の人間が立ち入ればたちまち新型エボラにやられてしまう。
したがって必然的に国際滅菌焼灼隊には全身を完全機械化したサイボーグだけが投入されることになった。
アフリカでの滅菌活動は殆ど補給支援を受けずに行わなければならない。
全身機械化サイボーグといえども数千度の高温で体を滅菌するわけには行かない。
せいぜい強い酸で体を洗うくらいが限度だし、それで新型エボラウィルスが百パーセント除去されるという保証はない。
しかも金属部分が多い体は酸で洗えば部品が劣化して大修理が必要になってしまう。
だから重大な故障がなければ補給のためむやみに帰還することは許されない。
滅菌焼灼サイボーグはほぼ完全な自給自足を前提として設計されている。
そこらに生えている木や草を食べてメタノールを生成しこれを燃料として全身の機械を稼働させる。
メタノールは巨大化された乳房に蓄えられ、両腕と乳首の火炎放射器の燃料としても使われる。
メタノール生成の過程で僅かに抽出される糖分やミネラルだけが厳重に気密化された頭部生命維持装置に送られて生体脳を養う。
頭部生命維持装置の外呼吸は分子濾過ファイバーでできた頭髪から行う。
このように制約が多い滅菌焼灼サイボーグに搭載可能な生体脳の持ち主は少ない。
適合者は百万人に1人いるか居ないかだといわれている。
適合者の殆どは18歳以下の女子だ。
したがって現役の軍人や警察消防関係者に適合者は居ない。
国連安保理事会決議によってアフリカ大陸を除く全世界において16歳から18歳の女子を検査し、適合者は強制徴用されることが決定された。
憲法の規定で徴兵制が実施出来ない国は改憲が迫られ、拒否すれば国連から武力制裁を受けるものとされた。
私の国は憲法の改正が難しい仕組みだったので、しばらくは大丈夫だとたかをくくっていた。
たとえ数年以内に外圧に負けて改憲されるとしても、それまでに19歳になってしまえば免れると思っていた。
だが、強大な武力を持つ国連ホスト国の恫喝に恐れをなした政府は、「国連尊重は憲法に規定されているから合法」とあっさり閣議決定してしまった。
おなじみの解釈改憲というやつだ。
即座にPETやら脳微小磁界画像化装置を搭載した恐怖の移動検査車が用意され、私の居た高校にもやってきた。
でも確率は百万分の一以下だ、まさか当たるなんて思っていなかった。
当時は急に決まったことだったためもあってか、即時素体確保制度はまだ導入されていなかった。
だから召集令状を受けた私は逃亡した。
場末のホテルを転々としながら売春で食いつなぎ、なんとか19歳になるまで逃げ切ろうと思った。
だが、売春代を値切ろうとした客とケンカになって通報され、その場で逮捕された。
すぐに私の身柄は警察から国際滅菌焼灼隊に引き渡されてしまった。
そしてマルタ島の前線要塞に送られ、その日のうちに開頭されて脳を取られてしまった。
摘出された私の脳には強制感覚注入装置が接続され、黴菌に対する激しい嫌悪感が刷り込まれた。
刷り込みが終わった私の脳は滅菌焼灼サイボーグのボディに搭載されて、アフリカ大陸に設けられたただ一つの入り口、スエズ検問所に連れて行かれた。
そこで私は一応自由の身になった。
というか猟犬のように解き放されたといったほうが正しいだろうか。
自由の身と言っても、与えられたものは草木を食べて火を噴く機械の体と刷り込まれた黴菌への激しい嫌悪に取り憑かれた脳だけだ。
あとは放っておかれても衝動に突き動かされてひたすら滅菌に邁進するしかない。
都市や村の廃墟に侵入し好き勝手に焼き払う。
国連安保理事会は私に黴菌がついていそうなあらゆるものを独断で焼き払う権限を与えている。
それどころかアフリカ全域に有効な殺人許可証まで与えられている。
まだ生きているエボラ発病者に遭遇したら衝動的に焼き殺してしまうから、あらかじめ合法性を担保されているわけだ。
黴菌がついていそうなものを見落とさないために私の嗅覚は極度に強化されている。
初めは死体や生きた発病者を焼く臭いが鼻についてとても辛かったがいつの間にか慣れてしまった。
嗅覚なんていくら強化してもいい加減なものだと思った。
ときにはアフリカから脱出しようとスエズに向かう免疫者に遭遇することもある。
そんなときは一応スエズが封鎖され脱出は許されないことを告げることになっている。
それで引き返す素振りを見せなければ容赦なく焼き殺してしまう。
ただ黴菌を嫌うだけでなく、それを世界に広めようとする者への憎しみも刷り込まれている。
もう一つ嫌いなものが刷り込まれている。
それは船だ。
だから私は船を見つけたらカヌーだろうがタンカーだろうが焼き払ってしまう。
だから私らの活動したあとに使える船は一隻も残らない。
そのため免疫者が船でアフリカから出るチャンスは殆ど無くなっている。

貪る娘

焼いて焼いて焼きまくって、メタノールが減ったらそこらに生えている草木をむさぼり喰らう。
私の両腕は手首の代わりに火炎放射口が付いているから手としては殆ど役に立たない。
頑丈な金属製の膝下ブーツのようになった脚で樹を蹴り倒し、踏み砕いて食べる。
足の爪先には指が生えているから、食べ物を拾い上げることは出来る。
脚は長めに作られ、股関節の自由度は大きく、楽に頭上まで蹴り上げることが出来る。
這いつくばらなくても食べることが出来るのはせめてもの救いだ。
初めは手首がない体にとまどったが、最近は慣れたせいか足指を使って髪を整えられるようになった。
髪が汚れたら窒息のおそれがあるから手入れは大事だ。
時々手首の火炎放射器で点火栓をころしてメタノールを噴射し、入念に髪をすすぐ。
草木は繊維が多すぎるからメタノール生成後に大量の滓が出る。
だから私は大便をするサイボーグだ。
滓が溜まるとチタンで出来た尻が大きく割れて排出ノズルが飛び出す。
そうなったらその場でしゃがんで大便を出すしかない。
排出後には自動的にノズルがメタノールで洗浄され全ての汚れが体外に吐き出される。
なぜかその大便は悪臭が酷い。
排便後は激しい嫌悪衝動に駆られて大便を焼く。
だから私の排便跡に黴菌がわく心配はない。
草木とともによく食べるのが砂漠で見つかる岩塩だ。
食べた塩分から抽出された塩素が二酸化塩素に変換されて私の吐く息に混ぜられる。
私の吐く息は空気中のウィルスを殺し身辺にウィルスの存在を許さない私の心を落ち着かせてくれる。
岩塩を食べれば心の平穏が保たれるというわけだ。
私たちに過酷な運命を課した国連だが、さすがに酷いと思ったのか時々巡航ミサイルで嗜好品を送ってよこす。
といっても中身の主力はメチル酒なのだが、それでも大便が出ないだけ草木よりはありがたい。
食べやすい樹を探してうろついているとライオンに逢うこともある。
初めは怖かったが、襲ってくる気配がないことが判ったから最近は気にならない。
考えてみれば、火を吐き樹を蹴り倒して貪り喰らう私の方がよほど怖いのだろう。
つまり怖いのはお互い様というわけだ。
ライオンが寄りつかないくらいだからもちろん何処ででも安心して野宿出来る。

相変わらずケータイ好きな娘

大きな都市を焼くときは体に組み込まれた衛星無線電話で仲間を呼ぶときもある。
衛星無線電話は料金さえ払えば世界中の一般電話と通話も可能だ。
一応高校はやめず通信部に転科出来たのでセーラー服を着ていない今でも私は女子高生だ。
身の回りに黴菌が無さそうなときは、たまにようつべの高校生会員コーナーで授業を聞く。
もちろん授業より無駄話の方が好きだ。
でも私がアフリカで人を焼き殺していることがだんだん知れ渡ったせいか友達は少なくなった。
それでもネットが自由に出来るからこうして世界のみんなに私のことを知って貰える。
私らには国連高官と同額の給与が振り込まれているのだが、いまの生活では電話代ぐらいしか使い道がない。
貯金が増えすぎたのでそれを使って弁護士を雇い、政府が私に下した処遇を違法として訴訟を起こした。
勝訴したところで政府には国連から私の身柄を取り返す力なんかあるはずがない。
万が一国連安保理事会の決定を取り消せたとしても、もう元に戻ることは出来ない。
もしも今の私の脳が生身の体に移植されたら、私はすぐに焼身自殺してしまう。
黴菌が全く憑かない生身の体なんかあり得ないからだ。
そしてもしも滅菌焼灼サイボーグ体のまま帰国したら私は殺人鬼の放火魔になってしまう。
私の殺人許可証はアフリカでしか通用しないからそんなことをしたら死刑になる。
だから、裁判に勝ったところでせいぜい賠償金で貯金が増えるだけで何も生活は変わらない。
ただ意地のためだけの裁判だ。
せめて勝訴をネットに晒して、私らの受けた酷い扱いを世界に訴えたい、ただそれだけだ。
電話やネットにのめり込める時間は少ない。
風に乗ってどこからか黴菌の臭いがしてくるからだ。
黴菌が憎い。
早く焼き払わなくては。
全部焼き払ったら清潔なキリマンジャロ中腹辺りに石で出来た豪華な山荘でも建てて暮らそうか。
滅菌焼灼娘

もうじき風邪の季節です。ウィルス注意!

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